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バスバギング用
ショートロッドを求めて

風変わりなバンブーロッドを試してみる
Artisan Bass 6ft3in 6wt: ARTISAN ROD WORKS
SetterClassic Trout : Cap's

バスバギング用ショートロッドを求めて

 フロートチューブによるブラックバス釣りでは、しばしばショートロッドが注目されることがあります。ルアーでもフライでも同様で、それは短い竿だと糸が絡んだティップに手が届くから…などと言われますが、本当の強みは短い竿による低い(水面に近い)射出位置からならば、湖面に覆い被さる樹木の下へルアーやフライをネジ込むことが容易になるからです。

 特にフライロッドについては、僕も大手メーカーの専用竿を買って使ったことや、6ft1inのカーボンロッドを組んだことや、ソリッドグラスで長さ1ヒロの竿を自作したこともありました。
 買って、組んで、削って…と色々試したところ、竿の返り(曲げられた竿が元の真っ直ぐに戻る動き)が速いショートロッドは、ホールやラインリリースのタイミングが掴みにくくて扱いにくいと感じていました。
 そこで曲がった竿がゆったりと戻る、反発力の弱い素材として竹に目を付け、バンブーでバスバギング用ショートロッドを作ろうとしたのですが、製作に失敗してしまいました。この先どうしようかと途方に暮れていた2016年3月9日、ヤフオクでバンブーロッドが出品されていたのを見つけました。

アルチザン・ロッド・ワークス
出品時の写真です

 Artisan Rod Works(アルチザン ロッド ワークス)の6フィート3インチ、6番指定のバンブーロッドで、フロートチューブでのバスバギングを想定したものでした。落札金額は15,000円とバンブーロッドにしてはとてもリーズナブルです。僕の失敗ロッドはルアーロッドに方針変更したので、これ幸い!と落札してしまいました。

 Artisan Rod Worksは広島県三原市在住のロッドビルダーのブランド(屋号?)で、専門学校の講師をしながらバンブーロッドを製作している方だったと記憶しています。しかしながらその後サイトがリンク切れになり、以降情報が出てこないので、現在も製作を続けておられるかは不明です。

 各部の作りを見ていくと…

リールシート
ハンドル

リールシート
リールシート

 リールシートは、フェンウィックタイプのブラックアルミ製。スクリューリングが下になるアップロックの形で取り付けられています。クラシカルなタックルによく合うとのコメントでした。

コルクグリップ
コルクグリップ

 コルクグリップはシンプルな細め短めのストレートタイプ。リールシートとの接続部分を見ると、リールの脚を入れるフードが見えています。この部分はコルクを掘ってフードを埋め込む処理がなされる竿が多いのですが、この竿では埋め込み処理はされていません。

埋め込み処理の一例
埋め込み処理の一例

 コルクグリップの中にフードを埋め込むのは、
 1.手とリールの位置を近づけることでタックルの持ち重り感が軽減できる
 2.ブランクの他にコルクとの接着面積が増えるからリールシート固定の強度が上がる
 3.見た目がすっきりする  などの目的で行われます。

バットガイド
バットガイド

 ストリッピングガイドはともかくとして、その上のガイドもスネークガイドではなく全てダブルフットのリングガイドです。フライロッドではソルト用で時折見られるくらい珍しい選択で、一見ではルアー竿?と思わせる外観です。作者のコメントでは手元まで楽に引き寄せられるよう、ベイトロッド用を選択したとのことです。
 ガイドを留めるラッピングはバスの体色を意識したというオリーブ色のスレッド(糸)で巻かれています。飾り巻きはありません。

ガイド
ガイド

 平成の終わり・令和の時代になれば、ブラックバス用ルアーロッドでも全てのガイドをダブルフットで組む物は少なくなり、ティップ(穂先)にシングルフットのガイドを使うのが主流です。
 その理由は…
 1.ティップはバット(手元)より重さを感じやすいので少しでも軽いシングルフットを使いたい
 2.ガイドが重いと竿の返りが遅くなるので軽いシングルフットでティップの振り抜けを良くしたい
 3.ダブルフットの足の間が竿より曲がりにくく竿の張りが強くなるのでしなやかなティップを作りにくい
 などがあげられます。
 さてはてダブルフットによって引き寄せるパワーを感じられるのか?注目です。

フェルール
フェルール

 フェルールは自製と思われます。径が太いパーフェクションタイプ?は少し大振り、ゴツめな印象を与えますね。大らかにバスを釣る竿ですから、これくらいが全体の雰囲気に合う気もします。

署名
署名

 署名は手書きでArtisan Bass 6'3" #6と書かれており、保護のためのウレタンコーティングもありません。
 塗料艶の無いブランクはオイルで仕上げられていることが分かります。出品時にはアメリカのプロビルダーが推奨するオイルフィニッシュとコメントされていました。プロビルダーが誰なのかの記載はありませんでした。
 実は僕が制作に失敗してルアーロッドになっちゃった竿がオイル含浸仕上げです。ウレタンなどの塗料を表面に塗るバーニッシュ仕上げに比べて塗膜が薄く軽いので、竿の返りが速くなる(でも体感できるほどの差はないと僕は思う)と言われています。表面の艶が少ないためゴージャス感が薄く地味とも言われますが、バーニッシュ仕上げより傷が目立ちにくいので、竿をガンガン使う人に好まれるようです。
 どこかの雑誌の、どこかのバンブーロッドビルダーへのインタビュー記事で「僕が自分で使うなら(売るための見た目を気にしないから)オイルフィニッシュで作る」と紹介されていた文を読んだ不確かな記憶があります。コメントの文章はこれのことかな…?

 ブランクの素材は淡竹(はちく)です。これもまた珍しい。よく知られたところでは野中角宏氏のKakuhiro Rodでしょうか。この竿には備長炭を使っての強い焼き入れで張りを持たせているので、バスの強い引きにも負けませんと作者のコメントがありました。
 淡竹はパワーファイバーの層がアルンディナリア・アマビリス(トンキン・ケーン)に比べて薄いと聞いたことがあります。もちろんパワーファイバーの層が厚い方が力が出るはずで、高番手ではパワーを求めてダブルビルド(パワーファイバー層だけを貼り付けて二重構造にする)工法の作例があるほどです。6番指定のこの竿、その力は如何ばかりか…?

ワインディングチェック
ワインディングチェック

 コルクグリップにブランクが刺さる部分は、通常ワインディングチェックと呼ばれる金具を入れることが多いのですが、この竿はスレッドを巻き上げて、コルクのコバまでバーニッシュでコーティングしてあります。

 こうして細部を見渡してみると、装飾に拘ることなく、実用上の機能に注目して仕上げられた竿との印象を受けました。余分な手間を省いて工期を短縮、価格を下げて売り易くして次の製作へ…というとにかく作って試したいという製作者の気持ちが窺えます。
 正直もっと見栄えのする、綺麗な竿なら他にもたくさんあります。しかしながらバスをフライで、それもフロートチューブ乗って釣るための短い竿の素材に、わざわざ淡竹を選んでいるところからして、この素材、このテーパーデザインでどうだろうか?という挑戦作と解していいでしょう。
 事実、失敗した経験をもつ僕にとってはこれ、試してみたいと思った時に装飾や見映えを排して買いやすい価格なのはとてもありがたいです。

 ところがそうして購入したものの、フロートチューブに乗ってフライでバス釣りをやる機会がなくなり、長期間放置してしまいました。理由は単純に他の釣りに浮気したってだけですが、やはりバスが簡単に釣れなくなった、気軽にフロートチューブを浮かべる場所が減ってしまったのが原因です。

セッタークラシック・トラウト
セッタークラシック・トラウトのハンドル側

 いざ使ってみようと合わせるリールを考えて、取り出したのはキャップスのセッタークラシック・トラウトです。2016年5月のアトリエORKの忘年会ビンゴ大会の商品で頂きました。

セッタークラシック・トラウト
セッタークラシック・トラウトの背中側

 フレームの縁に付くドラグスクリュー、ハンドル側の一列の穴や背面の刻印など、往年のハーディーを思わせるクラシカルなデザインはバンブーロッドに組み合わせるにもピッタリです。

ドラグスクリュー
ドラグスクリュー

 指定ラインはWF6F+70yd(20lb)、WF7F+50ydsです。バッキングライン30lbを50mほど巻いて、フライラインはバリバスのエアーズWF6番フローティングを巻いたらちょうどピッタリでした。
 トラウトの名から察するに大きな川や湖での釣りを意識したサイズのようですが、6番や7番指定のバンブーロッドはこの竿の他に持っていません。8番以上なら2本あるのですが(笑)。

セッタークラシック・トラウト
セッタークラシック・トラウト

 クリック音がギャー!とけたたましいです。大きな音は僕の好みじゃないんだよなー。静かな方が好きで、なんなら無音でも一向に構わないタイプです。

 スプールの着脱はセンターピンを外して行います。ギャー!と鳴くクリック音の正体はこちら。

セッタークラシック・トラウト
セッタークラシック・トラウト

 このリール、以前から存在は知っていたし店頭でも見かけていました。べらぼうに値段が高いわけじゃないけど、クラシックな雰囲気ってだけで買うにはちょっと…と思っているうちに生産終了になってしまいました。縁あって僕の手元にやってきましたが、ちょうど良い釣りを見つけた気がします。トラウトじゃないけどね…(笑)

 竿の長さが6フィート3インチ(約188cm)と短いので、テーパーリーダー&ティペットを長くすると扱いにくくなります。ましてやフロートチューブは腰まで水に浸かっているので、結構な深さのウェーディングと変わらない水面の高さなのです。ロールキャストのパワーが伝わりにくく水面からフライをひき剥がせないとか、うっかり疲れてくるとループが下がって後ろの水面を叩いてしまうとか、テーパーリーダー&ティペットが長すぎるとロクな目に遭いません。おそらく7フィート半のリーダーを使うことになりそうです。またティペットを繋ぐと結び目が草にひっかかるなど意外と使いにくかったりするので、直接フライを結ぶ方が良かったりします。

 問題はゆったりとフロートチューブでブラックバスが狙える場所が少ないことで、さっぱり出番に恵まれていません。どこか良い場所を見つけてデビューさせてやりたいと思っています。

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