トップ釣行記

忠類川でカラフトマスを狙う

北の果てでの研修の合間のささやかな楽しみ

1998-09-12

オホーツクでふと思う

 今回、忠類川で釣りをして、つくづく「日本(北海道)の川で大手を振ってサケの釣れる川がもっと増えたらなぁ」と思いました。

 近年、定置網で獲れるサケの値段が暴落しているのはご存知の通り。単純に言えば、獲れすぎちゃって値段が下がっているんです。無論、輸入の影響もあるんですが、それは値の高いサケが入って来ているということで、北海道定置網のサケ(アキサケ)はどう転んでも、輸入物の価格帯の商品じゃない。やっぱり獲れる量が多いからなんです。今は切り身で買う人がほとんどだし、そうすると輸入物の方が品がいいし、加工しやすい。売りやすいって事情もあります。

 獲れるようになった原因は、まず第一に川で行う種苗放流が効を奏して、回帰来遊数が増えていること。日本海側や道南は環境が良くないのか、それほど高い回帰率ではなくて3%とかの川があります。それに比べると標津川の15%なんてのは、まさに瞠目ものです。網走・根室なんかのオホーツクはやっぱりサケの海なんですよ。以前は野付でも5,000~6,000トンで漁獲が推移していたのが、平成9年は11,000トンですからね。

 第二に、サケが沖獲りされなくなって、みんな川に戻ってきちゃうこと。平成4年の日・米・加・露の条約で北洋サケマス漁業は全面禁止。日本とロシアの200カイリ内で細々とやってるだけになっちゃいました。近年のアキサケ大漁は種苗放流と沖獲り禁止によるものなんです。

 こうなるとサケは定置網で獲るしかなくなっちゃう。でも定置網ってのは、サケが川に帰ってくる秋の時季だけのもんなんです。それでお天気任せで毎日の漁獲量の増減が激しい。まさに大漁貧乏向け(泣笑)。雨が降って川の水が増えたりしたら、すぐにサケは川を目指して溯って行っちゃう。するとやっぱり定置網では獲れなくなる訳です。

 この川を溯っていく準備でサケにはブナが出始める。するとオスサケの値段が下がるんです。これが全体的にサケの価格を下げちゃうんですね。もう川に上がっちゃうサケってのは卵しか用はないってのが実際のところです。種苗放流用の採卵としても、イクラ製品になるとしてもね。そもそもサケ定置網が成熟して帰ってくるヤツを獲るもんですから、もうイクラ向きの漁業なんです。

 そんなわけで、オスはブナの出ないうちのヤツを切り身加工する、とか、ブナの出てるヤツはフレークにする、など商品開拓をしないといけない。売れる努力をしないと丸のままや新巻鮭では、もう売れないんですね。だから値段も安くなっちゃう。野付では組合で加工工場やってました。標津では中国への輸出の販路を自力で開拓してます。この地区で仕事をする人を生み出す可能性を秘めてる点でも、やっぱりオホーツクはサケの海なんだなぁ、と思いましたね。

 それと併せて、やっぱり川でサケ釣りをするべきだ、と強く思うんですよ。忠類川のように少なくとも種苗放流用の親魚採捕をしなくなった川からでも。だって川に溯るオスは値段がつかないんだし、忠類川の1日券3,500円より安くしても、やっぱり儲かりますよ。

 忠類川では、今年から釣果は申告制になったんですね。採寸してカードに書いて提出する。管理棟に持っていって見せなくてもいいんです。でもやっぱりリリース不可。次はリリース可になるでしょう。
 なんで言い切れちゃうのかってぇと、リリースしないと川に上ったサケが釣りきられちゃって残らないってことなんです。1日5本までキープと言っても100人入れば500本。僕の行った9月12日の土曜日は下流のルアーフライ区間だけで100人いるように見えましたからね。本来リリースは魚が減らないようにするための方法であって、「スポーツフィッシングの象徴」だとか「魚に優しく」なんて耳触りのいい言葉は却ってジャマだと僕は思っています。

 リリースすれば沢山の人間を受け入れられる、少なくともキャッチのみよりは。日本の川はそうしないと釣り人が多すぎて受け入れきれない。そういう状況であると言いきっても決して大袈裟じゃない。逆にこういう状況でないところなら、リリースは必要ない、とも言えるわけです。

 サケは川のものを喰うより、定置で獲ったものを喰う方が美味いんです。これも間違いない。喰ったから。カラフトだけど(笑)。漁師はブナの出始めくらいが一番脂がのってて美味いといいます。ちょっと成熟してきた頃。でも川に上っちゃうと激しい運動で脂がなくなっちゃうんでしょうね。だからリリース定着は難しくない、と思う。食っても美味くないんだもの。優しくリリースして再生産(繁殖)に加わってくれれば、釣り人としてこんなに嬉しいことはないですね。次は増えるんだもん。そうするとやっぱり再生産(繁殖)の出来るような川であって欲しいわけです。釣り人としては。三面護岸の川で釣るのは味気ない。こういう河川環境の管理を、「サケ種苗放流の環境保全」を錦の御旗にして、漁業者が担っていくってのはできんのかな?と思います。
 今、サケ増殖事業の改組の真っ最中(平成10年9月)なんですが、これを主体的に担う者として漁業者が出張っていく、と。で、河川の総合的な管理として遊漁もやる。自然産卵と種苗放流を上手く組み合わせるように。

 そうなると、サケを川で釣りにあちこちから客が来る訳ですよ。川で釣ったサケはリリースして多数のお客を受け入れる。環境が良くなれば、なおのことですね。で、宿に泊まって定置で獲れたサケを食う。だって、そっちの方が美味いんだもん。そういうサケによるエコ・ツーリズム的なものができないもんかな?と。

 そう考えるとサケはいろんな「メシのタネ」になるんです。オホーツクでは。漁業者は種苗放流が上手くいって、河川環境も良くなり大漁となる。加工工場でのオスの新しい商品提案や流通進出ができれば価格も支えられるし。そこで勤める人も増えますしね。あわせて釣り客が増えて地元消費も増える、と。観光立地となりゃ周辺の雇用・商売も増えますよね。サケをいろいろな角度から多面的に利用する地域の就業構造が出来るんじゃないかな?と思うんですよ。

 そうしてサケや河川環境を保全する方向で、「その土地に住む人がメシを食える仕事」がたくさん増えて、地域経済が「足腰の強い」複合的な構造になると、河川改修なんかの建設業で食ってく必要は無くなるでしょう。そんな地方対策はもういらないし、それに対象となる川がもう無い。こういう「その土地に住んでいく人のための方法」みたいなこと無しに環境問題とか言っても、なんだか言葉の上スベリみたいに感じているんですよ。

 だから気負わずにコレから言ってんです。「日本の川でサケが釣りたい!」って。

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