リクエストに応えて船に乗ってきました
もう2年以上も前のことになりますが、沖釣りのお師匠さまS氏に誘われてヤリイカ釣りに行ったことがあります。その時は残念ながら3バラシのみのボウズに終わったのですが、S氏がお土産にと釣ったイカを分けてくれました。
そのイカは彼女の家に賂いとなったのですが、これがヒジョ~に評判が良くまた釣ってきて欲しいとリクエストを頂きました。聞くとS氏のお宅でもヤリイカは奥様にとても好評であるとのこと。ヤリイカは女性にウケが良いようで、釣りに行ってヨシとのお許しを得るには最適の釣りモノであるようです。
そんなわけでS氏をお誘いして、行って参りましたヤリイカ釣り。向かう先は神奈川県長井はすえじ丸です。
6時に集合し、宿に行くと休憩所で常連さんが歓談中でした。料金を支払う際にヤリイカ2回めでまだ釣ったことが無いんです。よろしくお願いしますとご挨拶すると、宿のおかみさんは今日はお手伝いの人(仲乗り)が乗るから大丈夫よと請け負ってくれました。
7時に船は港を出港します。お客さんは片舷5人ですから10人ほどでしょうか。昨日の10日は3連休の中日とあってたくさんのお客さんが来たそうですが、釣果はいま一つだったとのこと。今日は良くなるといいなぁ…と期待します。
前日に近くに遊びにきたS氏のおかげで右舷の大艫(船の一番後ろ)の席になりました。ありがとうございます。経験が少ないものですから、できるだけトラブルが避けられそうな釣り座になると、精神的にとても助かります(笑)。
風の無い穏やかな海況とはいえ、朝の船上は寒いので早々にキャビンに入ります。そのままベンチでゴロンと横になり、睡眠不足と酔い止め薬からウトウトと寝てしまっていると、50分ほど走って船がスピードを落とします。仲乗りさんに尋ねると、船は沖の瀬と呼ばれる東京湾口の好ポイントにやってきたようです。
今日の仕掛けは中古釣具店で見つけたシマノ幻波イカ210という竿に電動丸3000H。道糸はPE5号が巻いてあります。11cmのプラヅノが5本にスッテが1本付いた市販仕掛けを使用します。幹糸がフロロ5号、枝スがフロロ3号10cmです。枝ス間は1.2mで、オモリは120号との指定でした。
船長の合図が掛かって釣り開始です。この日のポイントの水深は120~180mくらいでした。最初の一流しから左隣の方がいきなり5点掛けでヤリイカを大量水揚げしています。すげ~!などと言ってる間に左舷大艫に入ったS氏もヤリイカを1杯ずつですが、確実に上げています。
僕はと言うと、待ってみたり大きくシャクったり細かく誘ってみたり…とするのですが、なかなかイカが掛かりません。
いまいちイカのアタリが分からないので、S氏に小さなアタリなんですかね?と訊くとわずかに重みが掛かる程度。竿先が波と違う感触で曲がるのを見分けるとのことです。なんてこった…そんなにわずかなアタリだったのか…。
いきなりギュン!と絞るくらいをイメージしていたので、小さなアタリに集中すると、次第に違和感を感じるようになってきました。
ところがアタリが感じられるようになったものの、今度は取り込みに苦労します。アタリを感じて巻き上げると、生命反応を得られるのですが、悉く残り50mほどになってバラしてしまうのです。
ゲソしか釣れん…
お昼を過ぎてもゴマサバが4匹掛かって大きいものを2本キープしただけで、空しく時間だけが過ぎていきます。ツノをあげてきても、カンナに残るのはヤリイカの足(ゲソ)だけです。二つのツノにゲソが付いていた時などはどうやったら150mもイカをバラさずに上げてこれるのだろう?と水深より深く悩みました。
船上に持ち込んだインスタントコーヒーを飲んで気分を変えようと、船長のところへお湯を貰いに行くと、沸かさないと無いのでちょっと待ってとのこと。急ぐ話では無いので釣り座に戻ると、仲乗りさんが釣り座に来てお湯って何に使うの?と訊かれたので、ゲソしか釣れないから気分転換にコーヒーを飲もうと思ってと答えたんです。
その後、船長がお湯沸きましたと声を掛けてくれたので、結局コーヒーを頂くことができたのですが、サイトでポットありますと案内しているんだったら、事前に沸かして置いとくモンじゃないのかな?船長の手間が増えちゃうでしょ?まぁいいんですけどね。
コーヒーを飲んでいたら、仲乗りさんがイカを3杯持ってきて、僕のバケツに入れてこれ、持ってってと声を掛けてくれました。まぁ、頂けるものならありがたく頂きますが…そうじゃないよね?
その後、様子を見に来た時に仲乗りさんに言いました。イカをくれと言った覚えは無い。ゲソしか釣れないとボヤいたのはお土産を要求したのでは無く、自分で釣るためのアドバイスが欲しいからだ。どうやったら釣れるのか、もしくは自分のおかしいところがあったら教えてくれと。
そしたら丁寧に教えてくれました。ゆっくり大きくあおって竿先を高い位置で止めて様子を見る。しばらくしてイカの反応が無かったら、また竿一本分ゆっくり誘って様子を見る、を繰り返す。数回やって底から離れたら、また底に落として繰り返す、と。
あわせは、違和感を感じた時点で電動リールのスイッチを入れて巻き上げれば良い。バラし対策は、スピードカウンターで12(中速やや遅し)で一定のスピードで巻き上げること。船の揺れに注意して、イカに掛かる抵抗がまちまちにならないように気をつける必要がある、と。
さっそく実践してみると、程なくイカがモヤッと乗った感触が分かりました。アドバイス通り、イカにかかる抵抗が一定になるように注意しながらあげてくると、無事初めてのヤリイカを釣り上げることができました。
結局もう一回アタリを捕らえてアワせるところまでは行ったのですが、バラしてしまって終了の14時を迎えてしまいました。S氏は17ハイの釣果、竿頭は左隣のおじさんで19ハイ。なんとも腕の差が出る釣りだワイ…。こりゃ相当の修行が必要だ、ということがよく分かった釣行でした。
沖釣りに行くとしばしば感じてしまうのですが、今回もまた船長および仲乗りさん達の意識と僕のニーズがズレていることを再認識してしまいました。
その原因は沖釣り業界を侵食してしまっている釣果至上主義であることは間違いないのです。とにかく船長はお客に釣らせてナンボ、釣れなくてもお土産を持って返って貰ってナンボ、乗せたからには手ぶらで返す訳にはいかないというプレッシャーを感じているんですよね。
だから自分で釣りたいと思っているお客にノウハウを教えるのではなく、直接イカを渡しちゃったりするんです。イカが欲しいだけでお金を出すんだったら、わざわざ船になんか乗らないって。直売所で買った方が早いんだから。自分で釣りたいからこそわざわざ船に乗っている、という釣り人の気持ちに沿ったサービスができてないんですよね。
もとが漁師さんである場合がほとんどなので、釣った魚=水揚=生活費という図式の中で生きてきた人達(僕の仕事だって同様)ですから、その意識は分かり過ぎるくらい分かるんですが、遊漁船業というサービス業であれば船長の持ってる技術や知識その他を提供してもらって、一匹でもいいからどうにか自分で釣りたいという顧客の要求を満たすことが本筋なんですよ、やっぱり。
愛が欲しいよって叫ぶ我が子におもちゃを買い与えるだけで抱き締めることさえしないようなもの、って言ったら、例えがロマンチスト過ぎるか(笑)。
もちろん釣り人の側にも大きな問題があるのも確かなんです。お金を出して沖に出ていったのに釣れない、船頭何やってんだ!と声高に叫ぶ人が多いし、そうじゃないんじゃないの?って異を唱える人が少ないのが沖釣りの現状です。
自分でどうにかして釣り上げる一匹の価値それは損得勘定では割り切れない自分だけの達成感、と感じて船に乗る人のなんと少ないことか。まぁ目先の魚を追い掛け過ぎて、釣果に拘る気持ちも分からないではありませんがね。それほど釣りたて獲りたての水産物ってのは旨いんですから。
今回の獲物および仲乗りさんの差し入れは、無事彼女のお宅に届けて食膳を賑わせてくれました。美味しく食べて貰ったので、めでたしめでたし、です。
それでも僕は事前に釣りに行くとは言っても、お土産待っててねとか釣果を期待してねなんてことは絶対に言いません。それはアテにならない空約束だからなのは間違いないのですが、本当のところ僕が釣りに行くのは釣果のためにあらず、ただ己の欲求を満たすためだけの大いなる浪費だからなのです。
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