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パックロッド好きの原点

全てはコレから始まった
3201ML Spincast Rod 1.53m(5ft) 5pcs : RYOBI

RYOBI 3201ML

 2022年4月7日、ヤフオクで竿を一本買いました。リョービ(RYOBI)の5本継ルアー竿、3201ML Spincast Rodです。
 実はこれ、思い出の一本でして、僕が中学生の頃、アモルファスウィスカー・ファントム(ダイワ)より先に買った初めてのベイト(スピン)キャストリール用の竿です。懐かしくなってポチってしまいました。

 当時の中学生がブラックバスを釣るには、バスが居ると言われる池まで自転車で走って行くのが普通なワケで、そのため竿は自転車で持ち運びできるコトが絶対の条件です。その点で5本継の竿は最強と呼べるほど便利でした。
 この竿の仕舞寸法は35cm、竿ケースの全長にしても37cmです。これなら自転車(ママチャリ)の前カゴにポンと入れて運べるのです。2本継でも全長が80cmもあれば前カゴには到底入りませんし、継ぎ無しの延べ竿(ワンピース)ではもはや絶望しかありません。同級生のマエジマくんからこの現実を知らされ、オススメされたのです。
 その後、毎週のように自転車の前カゴに竿を突っ込んで、彼と一緒に釣りに行きました。今、思い返しても中学生らしからぬ地に足の着いた実戦的なアドバイスだったな…と思います。

 買った店も、千里丘の産業道路沿いにあった釣具店まで自転車で案内してくれました。中学生がおこづかいで買えたくらいですから安かったはずです。3,000円ほどだったんじゃないかな?

RYOBI 3201ML
ケース

 そんなコトを思い出しながら、ヤフオク落札した竿が配送されて、継いで軽く振ってみたところ、昔使っていた竿はこんなに固くなかったような気がします。調べてみると、どうやら竿の強さ別にL(ライト)、ML(ミディアムライト)があったようで、ルアー重量の適合範囲が違います。Lが4~14g(1/8~1/2oz)、MLが10~30g(3/8~1oz)と指定されているので、僕が昔使っていたのは多分Lだったろうと思います。

RYOBI 3201ML
ブランク

 内側をみると分かるのですが、ブランクはグラスファイバー製です。当時の安物はだいたいグラス製で、カーボン製はまだまだ高級品でした。グラスはカーボンより重いという欠点があるのですが、そもそもカーボンを使ったことがないので軽い竿があることさえ知らないのが普通の中学生の姿だったのです。一方でグラスは丈夫という長所があり、元気盛りの男子中学生が少々荒っぽく扱っても充分に耐えてくれました。

RYOBI 3201ML
継ぎ部分(右が穂先)

 継ぎは並継(なみつぎ)、太い手元側に細い穂先側を刺す方法です。そして穂先の込み部分のチラリと見える白いところから、穂先はソリッドグラスであることが分かります。ブランクの表面はソリッドグラスの穂先も穂持ちも、全て艶消しの黒で塗られています。

 昔はコストを抑えた(安物)竿はだいたい並継なんて言われたりしました。和竿の製作技術が下地にあったからこそ、コスト(特に開発費)をかけずにすんだのでしょうね。
 メス側の差し込み口は補強のために糸で巻く(口巻き)のですが、安価な竿なのに丁寧にもオープンスパイラル(隙間を空けた螺旋状)の飾り巻きまで入っています。

RYOBI 3201ML
トップガイド

 トップガイドには白いセラミック?リングが入っています。黒い部分はショック対策の樹脂リングかな?トップガイドの下にも飾り巻きが施されるのが当時流。ここにもオープンスパイラルの飾り巻きがあります。

RYOBI 3201ML
チョーク(一番手元側の)ガイド

 中間のガイドはハードガイドと呼ばれるタイプで、トップガイドにあるようなリングが嵌まっていません。足も輪も共通の素材(アルミ?)で作られていて、表面にメッキ処理がされていても、あまりに使い込むと釣り糸が輪の内側に溝を削ることがありました。糸溝はささくれて傷となり、やがて釣り糸を切ってしまうことがあるので、使い込んだガイドは交換するのが当たり前でもあったのです。

 ガイドラップに目を向けると、金色の塗装の上に茶色の糸でオープンスパイラルの飾り巻きが施されています。コントラストが出て見栄えが良くなりますね。コーティング剤は薄く、糸目が見えるどころか爪先で引っ掛かります。

RYOBI 3201ML
ハンドル

 リールシートは富士工業製で、一般的に使われていた、ブランクに接着するハメ殺しのタイプです。コネット等を利用した脱着ができるタイプに比べて部品点数も少なく、工法も簡単で製作コストを低くできます。とはいえ、上級モデルでも今日までずっと接着工法が使われています。ハンドル脱着機能にあまり必要性は感じられないし、何より竿を軽く作れますから。

MAXSTXSC10
スピンキャストリール MAXSTXSC10(アブガルシア)

 上向きにセットするスピンキャスト(クローズドフェイス)リールは、このリールシートとの相性が良かった(オフセット型では使えなかった)ので、この形はスピンキャスト用と呼ばれることがありました。その証左にこの竿の名前もSpincast Rodとなっています。

RYOBI 3201ML
グリップ

 グリップは往年の定番ガングリップ。皆、これが恰好良いと憧れたものです。素材はラバーで結構硬く、シボが入っていて滑り難いです。グリップに穴が空いているのは昔からずっと、そして今もって謎なのですが、落下防止の紐でも通す想定なのでしょうかね?この穴のせいなのか、富士のこのグリップはお尻の膨らみが小さめです。

RYOBI 3201ML
バット部分の飾り巻き

 バット部分にクロスラップの飾り巻きがあります。これも当時はカッコイイと好まれたものです。

RYOBI 3201ML
フックキーパー

 これも当時一般的に見られた針金を曲げたようなフックキーパーが付いています。時代が進むにつれてフックキーパーは減り、ルアーのフックはチョークガイドの脚に掛けるか、リールに掛けるのが一般的になりましたね。

RYOBI 3201ML
プリント部分

 竿のプリント部分は綺麗に残っています。ここは昔も今も泣きどころで、やがて削れてなくなってしまうのが宿命です。いつまでも残したいなら、クリアー塗料で塗って表面を保護するより他に方法がありません。

 全長は1.53m(5ft)です。僕がルアー釣りを始めた1985~86年(昭和60~61年)頃は、竿の長さは5フィート6インチ(約165cm)が標準、身長ほどが扱いやすいって言われてました。中学生の僕の身長は160cmくらいだったんじゃないでしょうか。この竿の長さがちょうど良かったです。
 大人が使うものでも、当時の竿は長いと重かったから全般的に短かったです。のちにカーボンの技術発展のおかげで竿が軽くなるにつれて、みんな使う竿がどんどん長くなっていきました。

 この竿は、ある日、沖に投げて引っ掛かったルアーを外そうと竿を煽っているうちに、穂先側3本がスポン!と抜け、根掛かりも外れず糸が切れて、ルアーも穂先側3本もなくしてしまうという災難に襲われました。代わりになる5本継の竿などそうそうあるはずもなく、もう一回買い直して2代目をお迎えしたほど、お気に入りだったのです。

 高校生になってからは、通っていた池が埋め立てられたことにより、出番が無くなってしまいました。けれども大学に入学する際もこの竿を持って東京へ行きました。
 大学1年時の6月第1週に、アウトドアサークルの新人歓迎合宿が河口湖で行われた時にも使いました。高速バスで河口湖に先着した我々新入生は、釣り竿などの荷物を載せた先輩の車が到着するまで暇を潰すしかなかったのですが、僕だけはこのパックロッドを持っていたので釣りをすることができたのです。数年経った後の呑み会の席で誰だったか、あの時オマエだけが釣り出来た…とすごく羨ましげに言ってたことを覚えています。

RYOBI 3201ML+DAIWA Phantom SS-15AC
初めはこのコンビでした

 そんな思い出もあるのですが、2代目が最終的にどうなったか覚えてないのです。処分したか紛失したか…。
 大学2年生から4年生の時にはホンダのバイクVTZ250に乗っていたので、このパックロッドを持って、当時ブラックバスがたくさん釣れていた北浦や霞ケ浦へ行ってもおかしくないのですが、そのような記憶はありません。その頃には既に処分していたのかもしれません。

 バイクで釣行を言い訳に、ルアーもフライもパックロッドを随分と集めてしまいました。何故パックロッドが好きなのか?と問われれば、こうした原初の体験が理由なのかもしれません。
 とは言え40年もの年月が過ぎ去ってしまうと、もはや当時の竿で釣りをしようとは思いません。釣って釣れなくはないでしょうが。
 僕が中学生の頃にはさ…と昔話をしたい時に引っ張り出して、記憶を辿るきっかけにしたいのでしょうね。そんな下心でうっかり買ってしまったのです。ですので、この竿は釣り場には持ち出さず、思い出の品として大事に保管しておこうと思っています。

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