余った革を貼ってみる
ここ3年ほどキャンプの際にスキットル(ヒップフラスク)にウィスキーを入れて持ち出し、外呑みに大変重宝しています。このウィスキースキットルですが、実は本屋さんで買いました。
正式な呼称はhip flaskというそうな
スキットルは俗称とのこと
箱に入って雑誌と並んで本棚に置いてあったんです。それを見つけて買ったのですが、調べてみると日本出版販売株式会社がHmmm!?というブランドで雑貨を展開しているそうです。なるほどね。
ご覧の通り迷彩柄の化繊の布が巻き付けてあるのですが、迷彩柄ってあんまり好きじゃないんですよね。全く持ってないどころか、むしろ迷彩柄を使った工作もやってますけど(苦笑)。
ある時、これに巻いてある布が革だったら恰好良いんじゃない?と閃きました。ええ、ロッドケースに使って余ったヤギの革を使いたい、という素材先行のネタです。
しかしながら、ロッドケース作成で頼った日暮里の革専門店レザークラフトきづきは既に閉店していますので、独力でレザークラフトに挑戦しなければなりません。ぶっちゃけ、縫い針と縫い糸はあるけど、その他の道具を調達せねばならないのです。あぁ。これこそ、きづきさんに相応しい案件なのになぁ。
こういう工作って実はイチから作った方がラクで、改造だと解体という余計な工程が入る分、却って面倒だったりします。今回は既に巻いてある布地をペンチで掴んで引っ張って剥がし、シール剥がしスプレー(ダイソー)を塗って残った接着剤を緩くしたら、爪の先でこすってこそぎ落としました。
綺麗に剥がしました
布地を剥がしたスキットルにロッドケースで使った茶色いヤギの革をあてがってみると、革の厚みのせいでかなり浮いた感じがします。ここの段差は少ない方が恰好良いはずです。どうにか革を薄くできないかなぁ?
ネットで調べてみると、革の裏面(床面)の全面を削いで、革を一様に薄くすることをベタ漉きというそうですが、ド素人の技量ではとてもできるものではありませんでした。そこで少し大きめに切り出した革を持って、2020年1月8日、And Leather日暮里中央店へ行き、ベタ漉きを依頼しました。
相談するとどれくらいの厚さにしましょう?と聞かれ、革の厚さを測って貰うと約1.6mmでした。0.5mmまで薄くできるそうですが、やはり革が切れやすくなるので、0.7mmに漉いてもらうことにしました。納期は3日後の10日仕上がり予定、お代は600円でした。
10日(金)に完了の連絡を貰ったのですが、タイミングが合わず、14日(火)に引き取りに行きました。
薄く2枚に剥がした感じ
受け取った革を見ると、綺麗に二枚に分かれていて薄くなっています。スキットルにあててみると、段差から少しはみ出るくらいで、すっきりとした恰好良い印象になりました。
作り方としては、単純に革を一巻きして接着剤で貼り付けます。ただ、革の合わせ目がそのままあるだけでは味気ないので、糸で縫い留めることにします。
ここで暖かくなったので、やれ釣りだ、キャンプだ、ツーリングだ、と遊んでしまい、作業が中断してしまいました。再開したのは2021年の4月8日でした。
まずはスキットルのサイズを測ってサイズのアタリを付けておきます。
サイズを測ります
カッターナイフで革を切って、サイズを合わせます。こういうものは隙間が空くのが一番不細工なので、ピッタリの寸法にします。誤差が許されるのはシワが寄らない程度に長いか、革を伸ばしてカバーできる程度に短いかの間です。革の左右方向は何度も合わせてみて、少しずつ切って、巻き付ける長さを合わせました。
巻いて微調整
スキットルの上辺と下辺のキワに油性マジックの黒で線を引きます。隙間が空いて地肌が見えても、銀色でなく黒だったら目立ちません。こんなアラ隠しはプロの発想(いかにB級品を出さないか)であって、素人のやることではないのですが、やれることは全部やります(苦笑)。
下辺のキワです
切り出した革の端切れを幅8mmに細長く切り出し、革を縫い合わせる端の穴を開ける部分の裏側に、革の裂け防止を施そうと接着剤で貼り付けました。
革の端から5mmの位置にマーカーで線を引き、この線に沿って穴位置の印を付けます。印の間隔は5mm、上下辺の端からは2.5mmのスキマをあけました。
この印に縫い穴を空けていきます。革細工では菱目錐と呼ばれる特殊な錐を使いますが、これは穴というより斜めにカッターで切るような切れ目になります。この穴は直線に縫っていくには良いのですが、今回の用途では不要なので、どこのご家庭にでもある千枚通しを使いました。作業台に乗せてプラハンマーでゴン!と叩いて穴をあけていきました。
穴を空けます
スキットルの表面をウェットタイプメガネ拭きで念入りに拭いて脂や汚れを取り除いてから革を貼ります。作業を分割することにして、まずは凸面から。貼った後は上下左右にライターの丸いボディ(千枚通しの丸い柄でも可)で擦って空気や接着剤、革の緩みを逃がしてやります。
一晩置いて固まっていたのを確認したら、裏表を返して側のRと凹面の横端を接着します。革に穴を空けた中央部はまだ接着しません。ここで上下の端に隙間が出ないようにギュウギュウ引っ張って追い込んでおきました。
完成イメージが見えてきました
この段階では縫いシロだけが観音開きのように残っています。ここで補強革がぽっこりと膨らんでしまっているので、やっぱり剥がすことにしました。スッキリと仕上げたいと思ったのです。
まずは縫い針に縫い糸を通して、ワックスを糸に擦り込みます。
縫い方は色々あるのですが、今回はベースボールステッチにします。
左右の一番下の穴に、裏面からそれぞれハリを通します。表面から出たハリを一つ上の穴に裏面からハリを刺して表面へ抜きます。縫い始めにあたる下辺は隙間ができやすいところなので、一番下の穴に糸を通した段階で接着剤で貼り付けてしまいます。
接着剤が固まったら、少しずつ接着剤を塗って革をスキットルに貼りながら上まで縫い進めます。今回は右側を先、後から左と決めて、糸のズレを揃えました。
最後は対面の穴に表面からハリを刺して裏で二本の糸を結んで革の裏側へ押し込んでしまいます。ここも接着剤を使って革を貼って、ライターの丸いボディで擦って、革を馴染ませてやりました。
完成です。
製作にあたって、世間一般で売り出されている革巻きのスキットルをネットで調べてみると、薄い革を曲面に貼るだけで仕上げているものが多く、縫い合わせているものは見受けられませんでした。
手作りの特徴として縫い目を意匠として入れたかっただけなので、縫い目に関してはあんなの飾りです。偉い人でもそれは分かりますよ(笑)と言われるような代物なので、レザークラフトって言うとおこがましい感じさえします。
本革を巻くとジャブジャブと水洗いするのが憚られるので、実は大幅な機能ダウンなのです。見た目が良くなる代わりに使い勝手が悪くなるという危険も伴う諸刃の剣。素人にはお薦め出来ない(笑)。まぁ所詮はド素人が作るモノですから。
今回、自前で革巻きがやれたのなら今後も自分で巻き替えできるだろうと楽観して、委細構わずジャブジャブ使っちゃうつもりです。
この革巻きのスキットルの役割は、夜のテント脇テーブルの上に置かれてランタンの光に照らされる、男の子ってこういうの好きなんでしょ?的なシーンの俳優です。ククサとか使い込んだ真鍮(ブラス)のオイルライター(ジッポなど)も有力な共演候補です。そうすると雰囲気のいいランタンも欲しくなっちゃいますよねぇ(笑)。
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