トチ狂ってこんなモノにまで手を出しました
SPRINGBROOK No.A1362B 8'6" 3pcs : Shakespeare
フライでバスを釣るのにハマってます。特にフロートチューブに乗ってバスバグやポッパーを投げるサーフェスゲームが面白くて、いろんな道具を試しています。
限定販売のV型フロートチューブやオーバーハングの下を攻めるためのお手製ショートロッドなど、あれこれ使ってみては、これはイイとかイマイチだとかやってます。
竿に関しては空気抵抗のあるバスバグを高番手の竿で気持ち良く投げたい、と思っています。そのためグラスロッドがいいんじゃないか?と目星を付けてフィリプソンを買って試したところ、これがなかなか良好です。
一方バンブーロッドでもショートキャストが気持ち良いのでは?と思っていたところによさげなものがヤフオクに出品されているのを発見しました。
Shakespeare社のSPRINGBROOK No.A1362というモデルで、8フィート6インチの長さの竿です。BASS WEIGHTと明記されたもので3本継ぎ。穂先が2本あり、出品者の説明によると細めがフローティングライン用と太めがシンキングライン用ではないかとのことでした。
BASS WEIGHTが何番のライン指定になるのかは分かりませんが、WF8Fのラインも投げきるとの説明もあるまさしくバス用の竿でした。
しかしバス用のフライロッドで既に3本。これ以上竿を増やしても使い切れないと、かなり迷いました。しかし高番手のバンブーロッド、しかもバスを釣るためのものは人気がないのか出品される機会がとても少ないです。これを逃したらいつ巡り合えるか分からないと思い切って落札してしまいました。
2006年7月21日の夜、宅急便で届きました。早速梱包を開けてみるとなかなかの美品です。経年による劣化のため改めてバーニッシュを施したとのことですが、それもよく分からないほどの状態で、使用した痕跡がありません。
各部を見ていくとなかなか面白いです。
リールシートは黒い樹脂製。ベークライトというヤツでしょうか。ロッドエンドに見えるネジを回すとネジと下の金具がせりあがっていきます。写真は一番伸ばした状態です。
グリップはしっかりとした感じの短めのフルウエルです。コルクのスも少なく、品質は悪くありません。
バット部にあるShakespeareマークも綺麗で欠落無し。飾り巻きも小洒落た感じです。コルクグリップのトップにはニスが塗ってあります。これが再バーニッシュなのかな?
ワインディングチェックがぴったりとはまっています。内径が六角になっているんですよね。手作業で作ると大変です。ファクトリーメイドだからパーツを大量生産できたのかな?これ結構コスト掛かりますよ。
ストリッピングガイドは赤い石のもの。多分アーガティンと呼ばれる人工石なのでしょう。錆びているように見えるくすみはバーニッシュです。
で注目はガイドラッピング。カラフルでラスタ(?)な感じ。いかにも暖かいところで使う陽気な竿!って感じで、見ているだけで楽しくなってきません?
2ティップを見比べると同位置のガイドのラッピングのパターンが違うのが分かります。というか各ガイドで色のパターンがバラバラなんですよ。濃緑・薄緑・濃茶・薄茶・黄色の5色くらいありそうですが、色の順とか幅とかまちまちなんです。
よ~く見ると分かるんですが、当然色違いの糸を使っているわけじゃないんです。そんなことしたら気が狂いそうになるくらい面倒です。あらかじめ何色かに染めた糸を巻いてあるんです。
ガイドラップは女性の仕事だったそうですから、工場の作業机にパートのおばちゃん(ジェーン、45歳、2人の子供アリ、175cm,85kg)が座って、鼻歌交じりでふんふ~んってやりながら巻いて、Wow! So cute!とか言ってたに違いない(笑)。
多分このガイドラップの違いでフローティングライン用とシンキングライン用の2ティップを見分ける…なんて日本人的発想はしちゃいけないんだと思います。
バンブーフライロッドは渓流でのマス釣りを目的とした#4や#5のものが圧倒的に多いようです。高番手のものとなると竿自体が重くなるためか、今日ではあまり見られません。
もちろんブラックバスも対象魚ではありますので、古いバンブーロッドメーカーはブラックバス用の竿のラインナップを揃えていたようです。この竿もそういったもののひとつであったようです。
しかしなにぶんブラックバスは気楽で身近な対象魚であるため道具が省みられないのか、はたまたルアーでの釣りが一般的になりフライでの釣りは一部マニアしか残らなかったためか、日本にやってくるモノは非常に少ないようです。
ちょっとネットで調べてみるとShakespeare社の歴史について書かれたサイトを見つけました。これによると1930年前半に不採算部門の整理でバンブーロッドの自社生産をやめ、以後はサウスベンドやモンタギュー、ヘドンによって作られたとあるので、多分今で言うOEM生産なんですね。
1897年に創業されたShakespeare社は当初高級な釣具製造で知られていたようですが、戦後いち早く(1947年)グラスファイバーロッドに取り組んだ会社です。グラスファイバーの竿WonderRodが49.50ドルで大々的に売り出されると、バンブーロッドは仕入れを止め、カタログの後ろに追いやられ、在庫処分として15.00ドルの値段が付けられたそうです。
竿袋のタグにはFINE FISHING TACKLE HONOR BULIT FOR OVER 50 YEARとありますから、1897+50=1947でちょうどこの在庫処分の頃の品じゃないか?と思います。
1970~80年代の日本でも安価なルアー竿やフライ竿が輸入されていたことで知られています。僕が物心ついてルアー竿に興味をもつ頃は日本国内で製品を見掛ける最後の時期でした。僕より年上のベテランアングラーには馴染みがあるでしょう。
こんな状況からも分かるように、同社は少量の高級品を専門とするのではなく、お手頃な大衆向けの竿を得意とするメーカーだったようです。
古いバンブーロッドとはいえ、この竿の落札金額も出品時価格の38,000円でした。古い大衆向けの竿とすれば安価と言えませんが、職人の技術と人件費が込められた工芸品とも言える今日のバンブーロッドをオーダーすることに比べれば、0の数が一つ少なくて済みます。バンブーロッドとはどんなものなのか?を体験するには、ちょうどいい出物と言えるでしょう。
付属のケースです
これまであれこれと言ってきましたが(それはそれで楽しいのですが)、あまり肩肘張らずにゆる~くやるのがバスらしいと感じる方も多いでしょう。
この年代物の竿も、作られた当時は多分アメリカの片田舎でのんびりした休日を水際で過ごす際に持ち出す、ありふれた身近で気楽な釣りの道具だっただろうと思います。
どんな休日の過ごし方だったのか…と想像すると、カラフルなバスバグをケースに入れて…とか、ランチボックスにサンドウィッチを詰めて…とか、オーバーオールに長靴履いてカヌーを水際によっこらしょ…とか、そんな風景が浮かんできて、どこか水の綺麗な湖にでも釣りに行きたくなってきました。
写真を取り直しました
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