最良の機会を得て最狂の企画が動き出す
ガイド位置が決まったので、ラッピングの工程に移ります。ラッピングスレッドの色、トリムなどの飾りはいつも激しく悩み迷います。竿の性能にはあまり関係がないにも関わらず、他人がまじまじと見る個所であり、竿の外観・印象を決定づける大きな要因となっています。
この竿は、先生のご指導のおかげで寸法はバッチリですが、自分の技術・注意力の無さにより外観はあまり洗練されたものにはなってません。ぶっちゃて言えばブランクの貼り合わせに隙間が空いていたり、竹の表面にエクボができていたりします。
幸い(?)にもヤングは実用重視、あまり装飾や美観に力を入れていない僕の勝手なイメージがあります。もちろん素人の一本目と比べてはいけないのは重々承知です。
さらにこの竿はバスバギング用です。僕のイメージではあまり華麗なものではないんですよね。ヨーロッパ生まれのフライロッドが長い年月の結果、新大陸の片田舎にまで伝わっていくと装飾を落として地元の魚に親しんでいった…といえば表現が詩的ですかね?
今回はずばり無骨なヤンキー(アメリカ人)の竿のイメージでいきたいと思います。先生からもその竿は繊細なイメージにしない方がいいとアドバイスを頂きました。
ラッピングスレッドはあまり細いと巻きにくいし疲れるので、50番の絹ミシン糸黒にします。浦和のユザワヤにて購入したカナガワ株式会社のオリヅル印のもの。100m巻きで240円だったかな?GudebrodのAスレッドよりもちょっと太いようです。
1938年にデュポンがナイロンの事業化を発表したらしいので、ヤングの頃にナイロンが無かったわけではないでしょうが、ワインディングスレッドとして質・値段など一般的に使えたかどうか?まぁ現代のナイロンスレッドであれば何も問題はないでしょうが、やっぱりバンブーロッドにはシルクが雰囲気ですよね。
ストリッピングガイドのフットは上面を削ってラッピングの盛り上がりを薄くするのが定石と言われます。ところが透けるシルクスレッドを使うと、削った跡が見えるかも知れません。銀色のガイドならあまり気にしませんが、黒のガイドだと銀の地肌が見えて色が変わっちゃうでしょう。結局黒の糸で覆うからあまり見えないのかもしれませんが、わざわざ手を掛けて削った跡を見せるのもアレなので削りません。
黒糸の下地が銀色だと、削った跡が見えなきゃラッピングの隙間(腕前の悪さ)が見えちゃうんですよ。(笑)
ガイドの足については、ヤングがサマーズに何をしているんだ?と聞いたらガイドの足を削ってるんですと答えたという話があるそうです。ヤングはガイドの足は削らなかっただろうってコトで。
当然飾りも無し。これでは無骨というより手抜きじゃないの?とは言わないでね(笑)。
フェルールのラッピングも同じ糸の黒一色です。セレーション(切り込み)を隠す程度に巻きました。
16日夜、ガイドのラッピングが終わったところからコーティングに取り掛かりました。
まずはティッシュペーパーにノンシモンを含ませて、ドライイングモーターでブランクを回しながらラッピングスレッドに付いた指の脂分を綺麗に拭き取ります。
コート剤はFlexCoatLITEを使いました。1回目のコーティングはシンナーを等量入れて水のようにサラッとした粘度に作り、スレッドにコート剤を染み込ませる程度に塗ります。粘度が高い状態でいきなり塗ると、塗りむらや気泡ができるモトになります。
充分に乾燥させたらこんな感じに仕上がりました。思ったほど透ける感じはなく、しっかりとした色合いです。
これを見ていると糸目が見えるような薄いコーティングもいいんじゃないかなと思えてきました。何か安っぽいとか優美さに欠けるなどと言われることもありますが、バンブーの地肌に合うんじゃないかな?今回のコンセプトである無骨なヤンキー竿の感じになるのでは?
これまで何本か竿を作ってきましたが、全てエポキシ塗料を使った糸目が消えるくらいのコーティングでした。というかエポキシ塗料は粘度が高く、厚く強固な塗膜ができるのが持ち味ですので、糸目が見えるような薄いコーティングにするには却って難しいのです。この場合多くはウレタン塗料を使うようです。
うむ、ここでいっちょうナガシマの2液ネオウレタンクリヤーを使ってみるか?と閃きました。ところがこの後、ブランクの本塗装にウレタン塗料でのディッピング(ドブ漬け)が待っています。違う塗料を使うと相性が悪かったりするかな?先生に問い合わせたところ全然問題ないですよ~とのことでした。
結局1回めのコーティングはティップ(穂先)・バット(手元)ともにFlexCoatLITEを使いました。18日夜、バットセクションの2回めのコーティングからウレタン塗料を使います。
1回めと同様に塗料を筆で塗ります。厚くボッテリとならないように薄くさらっと、に気を付けます。
ウレタン塗料の特徴は乾燥・硬化が早いことです。19日朝に確認してみると無事乾燥・硬化していました。引き続き19日夜にティップセクションの塗装をします。
20日未明に確認するとこちらも無事乾燥・硬化していました。もう今日が次の活動の日です。ホントにギリギリの工程になってしまいました。
本来なら薄く塗り重ねることを何回も繰り返すのでしょうが、糸目が見えるくらい薄くという気持ちもあったので、エポキシ1回、ウレタン1回の薄塗りにしました。先生に相談して、塗膜が足りないようなら追加ですね(笑)。
その18へ続く
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